●はじめに
何かものを描くという場合、そのもの自体の構造や仕組みをよく理解する必要があります。
本来ならば、そのものに直接触れて、全体をじっくりと見たり、凹凸の変化を指先で追ってみたり、
色の変化を光の当たり方など条件を変えた上で観察したりするのが一番なのですが、
現実では手に入りにくいもの、手で触れにくいもの、触れられないもの、など必ずしも緻密な観察が出来る訳ではありません。
ですから、そのようなものを描くためには、「ものをイメージする力」を育てることが大切です。
●大まかな形
では、白菜を例にして見ていきましょう。
白菜は大まかな形で言うと、直方体の立体です。または四角柱。
実際は凹凸がたくさんある多面体ですが、ものを描く時にはローポリゴンのような大まかな形で見ることが有用になる場合があるのです。
また、白菜以外のものにおいても同じように考えてみましょう。
人間は直方体。犬も直方体。鉛筆も人参も、何でも、四角い立体の中に納まります。
そうして、ある程度大きな形を理解出来たら、彫刻のように面を切りだし、少しずつ多面体にしながら描いていくと、
いい場合があります。(この過程を飛ばす人もいますが、躓いた時にはセオリーに立ち帰ることも必要ですので)
●らしく描く
ここで問題ですが、直方体を直方体らしく描くには、どうしたらいいでしょうか?
正解は、角をしっかりと描くことです。他にも、影を描く、と言うのがありますが、こちらは後回しにします。
不透明の立体は向こう側がどうなっているか、厳密には絵から判断が出来ませんが、
一応、角をしっかり描くことで、人間はそれを直方体だと理解します。
今の段階では、パースなどの遠近感は無視して下さい。
直方体を直方体らしく描くには、角をしっかりとかくことが大切です。
同様に、白菜においても、角を描くことで立体の描写に説得力が出るのです。
もちろん、白菜は多面体ですから、あちこちを意識して描くとめんどくさいことになります。
そこで、前述の大まかな形、を意識してみましょう。
●らしく描く2
立体としてのらしさ、の他にも、要素としてのそのものらしさは多く存在します。
直方体にも角以外の要素がありますが、角で十分それらしく見えるのは、要素として角が強いからです。
白菜における「らしい」要素には何があるでしょうか。
まず、目立つのが葉脈と葉の芯部分です。色ももちろんあります。
各部の形であったり、重なり方、相対比、などなど、ただの白菜であってもいろいろとあります。
その中で、これは重要だと思われる要素を、見て感じ、絵に描き表すことが大切です。
他にも、要素と立体の関わりにおいて言えば、真ん中の芯の切断面の向きが重要となります。
大まかな形で言うと、側面と垂直方向にあるような描き方で描くだけで、立体の説得力、実物感を表現することが出来ます。
このように、よく観察し、不自然さの無いように描くことで、らしさが出る場合もあるのです。
●まとめ
・まず、物体は大まかな形、立体として見る
・角(または辺)、すなわち面の変わり目を意識する
・そのものの「らしさ」を観察し分析する
●宿題的な何か
身の回りの物を、よく見て観察した後、脳内でイメージする練習をして下さい。
ポリゴン制作ソフトのごとく、全方位からぐるぐると回して見ているように、イメージして、
そのものがどんな立体になっているか、イメージする練習をして下さい。
こちらからものを見ている時に、反対側ではどういう形をしてるか想像する力がつくと、
お絵描きする際にも役立ちます。
身の回りの物を模写する場合も、同じ方向から観察せず、立体の構造を良く見て描いて下さい。